2021.06.09
【前編】SUPER STUDIO資金調達の舞台裏〜ALL STAR SAAS FUND前田ヒロ・SUPER STUDIO林紘祐対談〜
SUPER STUDIOは、シードからグロースまでSaaSベンチャーに特化して投資と支援を進める「ALL STAR SAAS FUND」から資金調達を行いました。今後、弊社はALL STAR SAAS FUNDからご支援や助言など様々なかたちでサポートを受け、さらなる成長を目指していきます。
(資金調達に関するプレスリリースはこちら)
ここでは、今回のご縁の経緯やALL STAR SAAS FUNDがSUPER STUDIOにどんなことを期待しているか、そして、どこに成長のポテンシャルを見ているかといった点について、ALL STAR SAAS FUNDマネージングパートナーである前田ヒロ氏とSUPER STUDIO代表の林紘祐が語った対談の様子を前後編に分けてお届けします。
資金調達が決まるまで
〜この4人でしか見えてこないアイディアがある〜
林 本日はどうぞよろしくお願いします。
さっそくですが、初めてお会いした時の私達への第一印象はどのようなものでしたか?
前田 最初から林さんをはじめ経営陣4人組と会いましたよね。正直なところ、サイトに掲載されている経営陣4人の写真を見た時は、「あれ、これはちょっとチャラそうだな」というふうに感じました(笑)。写真だけを見ると、ですよ。
ただ、実際に話してみると、4人ともすごく真面目で誠実で、そして、切実な想いをもってビジネスをしているのだと感じました。
私が特に心を掴まれたのは、アイディアの生まれ方やプロダクトに対する思想がすごくしっかりしていることと、「この4人じゃないとこのアイディアにはたどり着かなかっただろうな」という視点や、4人が揃っているからこそ湧いてくるモチベーションがあるのだ、ということをひしひしと感じた瞬間です。
私は、投資家として人を見るとき、「ストーリー性」を重視しています。どういうふうにアイディアが生まれ、どういうモチベーションでみんなが会社を作って経営しているか、というところを注視しているというわけです。
そうした目線で見ると、林さんも含めて4人ともEC業界での経験が長く、自分たちでD2Cを運用したこともあるということで、そうした経験の上に生まれた気づきやペインポイントの理解、世界観が、プロダクトやSUPER STUDIO のあり方そのものに根付いているのだと強く感じました。
林 ありがとうございます。ストーリー性というところはこれまで投資判断をされる時にもやはり重要視されてきたのでしょうか?
前田 そうですね。これはスタートアップに限らずすべての会社に言えることですが、経営をしていると、必ずしもいつでも上手くいくわけでもありません。どこかで絶対に壁にぶつかるものです。
そんな時、ほとんどの場合が原点に戻ろうとしたり、「自分たちのモチベーションは何か、なぜ会社を作ったのか?」という根本的なところに立ち戻ったりして、再び歩きだそうとするものです。
だから、原点がしっかりしてないと、挫折して組織が崩れてしまうというわけです。この点、SUPER STUDIOとその経営陣に関しては、原点の部分がすごく強固で層も厚いし、どんな壁にぶつかっても乗り越えそうだな、という印象を受けました。
林 そうすると4人の共同創業者というのは評価のポイントとしては高い、というわけですね。
前田 そうですね。例えば大学時代の同級生だったり、前職で一緒に仕事をしていたり、という繋がりがあって、だから4人ともすごく仲がいいし絆が非常に強い、というのはプラスの評価のひとつです。
林 そうだったのですね。
資金調達の話をいただいて最初にお会いしたのが前田さんだったわけですが、私の前田さんへの第一印象は、「ロジカルに物事を考えてデータに基づいて意思決定をされる方」というものでした。
その後、話が進んでいけばいくほど、情熱的で会話を重視し、それを通して私たちを評価しようとされているのだとわかったのですが、投資の意思決定をされる時も重視するのが「ストーリー性」だというのは、なるほど、という思いです。
結局は「人」で会社を評価する理由
前田 結局は人が全てですよね。会社を経営するのも人ですし、推進するのも人。そして、人を動かすのもやはり人です。だから人についてはかなり重視しています。正直なところ、財務状況などの数字でわかるものはすぐに評価できるものです。しかし、人についてはそうはいきません。
林 おっしゃる通りだと思います。そうしたこともあって、弊社内のメンバーやパートナー企業様やお取引のある企業の皆様にもヒアリングをされた、ということだったのですね。
ちなみに、経営陣以外のメンバーに対してはどんな印象を持たれましたか?
前田 そうですね。全体的に「助け合う」という意識が強い組織文化なのだと思っています。何かに悩んだ時に相談できる相手がいるし、何が大事なのか何を後回しにすればいいのかをそれぞれがはっきり理解していることが伝わってきました。
また、valueとして掲げられている内容「お客様を大事にしなければならない」ということと、その価値をしっかり共有していて、メンバー全員が高い当事者意識を持っていて他責志向の人はいない、ということがインタビューを通して感じられました。
印象的だったのは、お客様からプロダクトの利活用についての問い合わせを受けてサポートしたり対応したりする部署であるCSのメンバーたちと話をしていた時のことです。お客様から課題が上がってきたときに、一般的に多くの場合は部署内や自分の中で完結させようとするものですが、SUPER STUDIOではCSチームがプロダクト開発チームや、場合によってセールスやマーケティングチームを巻き込んで、一緒に課題解決を目指していると聞いています。
これは部署間の連携がとても強く、みなさんが当事者意識を持っていないとできないことだと思います。
林 そうですね。特にCSチームとセールスチームとは毎日のように会話してくれています。
前田 SaaSというとTHE MODEL(ザ・モデル)の概念が非常に知られるようになったことで、分業する、というイメージが強くなっていると思います。しかし、本当の意味でお客様の体験の向上を目指し、いいプロダクトやサービスを作ろうと思うと、やはり部署間の連携が強くなければなし得ません。
SUPER STUDIOも分業はしていますが、強く連携しているからこそ、より良いサービスになっているのだとCSのエピソードからもわかりました。
評価の根拠はメンバー全員の高い当事者意識
林 部署間連携もそうですが、弊社の場合、実際にD2Cに携わるメンバーが身近にいて、彼らからヒアリングできることも功を奏しているのかもしれません。
前田 確かに、自社製品を日常業務で利用する、いわゆるドッグフーディングであることは、投資判断をする際にもプラスの評価になりました。
SaaSもEC領域も非常に変化が激しく、瞬く間にニーズが変化する分野だと思います。そうした中でビジネスをするなら、常に「最先端のニーズが何なのか」を把握できなければならないでしょう。自分たちがユーザーであればニーズに敏感でいられますね。
ある意味で、自分たちが運営することによって誰よりも先に先端の情報や経験を得られるので、そこはecforceをはじめ様々なプロダクトやサービスを設計する上で強みになっているはずです。
林 自分たちがプロダクトやサービスを提供するだけでなく、ユーザーでもあるから、変化に敏感になるというのはまさにおっしゃる通りです。対談をしている今日(5月21日)、ecforceの管理画面が新しくなるということで、社内説明会があったのですが、軽い告知だけでも業務委託の方を含むほぼ全員が参加してくれました。
「参加者、多いな!」と驚きもしたのですが、やはり全員がシステムに強い関心を持ってくれているのだな、と、手前味噌ながら嬉しく思っています。全員が当事者意識を持って「プロダクトを理解しよう、使いこなそう」と思う気持ちは今後の会社の力になる気がしています。
前田 その話を聞くと、全員が当事者意識を持つようになったきっかけや働きかけ方があるのか、教えて欲しいくらいです。
林 なんでしょうね…。規模の問題もありますよね。私もそうですし、ほかの経営陣も今でも新卒と一緒に取り組むプロジェクトに入っているので、経営陣との距離感が近いから伝わる何かがあるのかもしれません。逆に言えば、今後は課題が出てくる可能性もあります。
もうひとつは、2年ぐらい前の出来事でしょうか。当時は資金調達などを考えず、ひたすら黒字経営にこだわっていました。その時に、「今いる仲間と一緒に強い組織の根幹を作って、筋肉質な組織にしたい」ということを打ち出したことがあります。今でもその文化が根付いているところはありますね。
それ以降も、月次に発信する内容はかなり綿密に考えているつもりです。話す時間が限られているので抽象的になりやすいのですが、そこを経営陣や運営スタッフと一緒にできるだけ具体的に伝えられるように頭を使ってやっています。
前田 そうした経緯があって、さらに発するメッセージの真意がしっかりと伝わっているから、メンバーの皆さんも「経営陣は何を認識して欲しいと思っているか」を理解し、納得してくれているのでしょう。会社のvalueの浸透率が高く、当事者意識が根付いているのはそうした努力の結果なのですね。
SUPER STUDIOのvalueの成り立ち
〜投資家はそれをどう見たか?〜
林 valueは大事ですよね。特に、SaaSにとってのvalueは重要です。
前田 本当にそう思います。valueはルールではないけど、自分たちがどうあるべきか、会社にとって何が大事なのか、といったことを言語化して、それを守るものです。それが浸透して行動に繋げられるかどうかによって経営戦略の推進力や実行能力にも影響が生じると考えています。
もしvalueが浸透していなければ、みんなバラバラの価値観で動いてしまい、なかなか戦略がうまくいかなかったり進まなかったりするほどです。逆に、valueが体現できていれば、戦略がスムーズに遂行されるものです。
特にSaaS企業のvalueにとって重要な要素は、お客様目線ということでしょう。SaaSにとってお客様の成功が全てなのだから、その方々の目線で物事を考える価値観と、成功に導くためにそれぞれが努力する高い連携力は重要だと思っています。
そこで林さんに聞きたいのが、「SUPER STUDIOのvalueはどのように作られていったか?」ということです。
林 あれはめちゃくちゃ苦労しましたね(笑)。お客様ファーストという考え方は合宿で花岡(COO)が、「結局どうやってSUPER STUDIOは成功するのか?」という問いを立てて、結論として、「お客様が先に成功する。そして、それを支えるプロダクトを提供し続けることで、いい意味での“共依存関係になる”のが成功だ」と言い始めたことから生まれました。
投資の決め手は「この4人なら大丈夫」という確信
林 ところで、前田さんは学生時代にエンジニアとしてプログラミングなどをやっていたと聞きました。そうした経験から、技術的な視点でも投資対象を評価することはあるのでしょうか?
SUPER STUDIOの製品のソースコードを確認したりされたのかな? と。
前田 プログラミングはしていましたね(笑)。ただ、SUPER STUDIOを含め、例えば「革新的なコードを書いているのか」という点は投資を決める上で詳細の確認はしていません。
もちろん技術的に重大な問題があってはいけないので無視しているわけではないです。でも、結局のところ最終的には「お客様がハッピーかどうか」が一番重要なことなので、どれだけ最新の革新的な技術が使われていたとしても最終的にお客様がハッピーでないと意味がありません。そういう観点では、技術的な面には重きを置いていないのです。
ただ、SUPER STUDIOのecforceをはじめとするプロダクトやサービスの設計からは、かなりのこだわりを感じています。なにより、お客様への理解度が高いことをすごく感じています。
設計の仕方やUIなどの一つひとつが、お客様を理解しようと思って設計されていますし、ここに至るまでは結構大変だったのだと感じてもいます。それをやり切るのは相当な熱量がないとできないことでしょう。
そう私が感じるのが “本当”なのか、SUPER STUDIOの顧客数社にインタビューをさせてもらいましたが、みなさんがプロダクトやサービスに満足されていて、お客様の声を通してもかなり熱量を入れてこのプロダクトを作っているのだな、と伝わってきました。
林 ここまで、かなり人となりや想いの部分を重視して評価されていたのだなぁと思い、嬉しいのですが、ALL STAR SAAS FUNDではもちろん財務や法務のデューデリジェンスを重視されていないわけではないですよね?
資金調達についての話を聞いていると、コンプライアンス違反などの「一発退場」な事柄について、事前に審査する必要性は高まっている、と聞いています。
前田 そうですね。ただ、先ほども話した通り、いわゆるビジネスデューデリジェンスには限界があるし、極端にいうと事前にリスクが見つからないケースもゼロではありません。ですので私たちは、リスクの源を見極めるためにレファレンス(信用度の保証)を確かめることの方に重きを置いています。
例えば、周囲の人物たちが経営陣をどう見ているか、経営陣がお互いにどうお互いを見ているのか、従業員は経営陣の決断力を信頼しているのか、ということです。
そうしたレファレンスを確かめるプロセスの中で印象的だったのは、経営陣の一人ひとりと話していると、それぞれがお互いの長所と短所をはっきり言葉にしていることでした。「ここまでは任せてもいい、ここは得意じゃない」ということをみなさんはっきりと話されていました。
こうしたことは、強い信頼関係がなければなかなか言えないことだと思います。また、その話をする時に出てくる言葉や話し方からはお互いへの深い尊敬や尊重している雰囲気が伝わってきました。信頼関係もあって絆がある、というのはそうしたところから感じ取ることができました。
だから、安定感や情熱を感じ、コンプラ違反に関する不安定要素は全く感じなかったわけです。「この4人だったら一緒に成長し続けてお互いが会社と共に成長できそうだな」と、思いを強くしたほどです。
私たちは投資をするので、ある程度は経営に関与できるようになるかもしれません。しかし、結局のところ最終的に決断を下すのは経営者の役割です。難しくても正しい決断ができるか、その役割を委ねてもいいか、ということを確かめたいから、レファレンスを通して慎重に実態を見るべきだと思っています。
私たちもたくさん企業や経営者を見てきた経験がありますし、いろんな人の話を聞くことでレファレンスの確かさを固められると考えています。
SUPER STUDIOの成長への期待度
〜独自のポジショニングだから目指せること〜
林 ちなみに事業ドメインについてはどうでしょうか? EC関連のSaaS企業は他にもありますが、それと比較してもecforceはかなりハイタッチなプロダクトだと思っています。
前田 そうですね。私たちの見方では、ecforceはなかなか参入できない独自のポジショニングができていると思っています。他のプロダクトでは満たせないところをカバーしている、ちょうど競合がいないところにある、というイメージです。
実際にecforceのユーザー企業様と話をしていても、「3〜4社と比較検討して、最終的にこれにいきついた」とか「別のプラットフォームを試していたけれど、これが一番フィットする」という話を聞きました。それらは結局、ecforceでしか解決できない課題がある、ということなのだと思います。そういう意味ではすごく独特で、独自性のあるプロダクトを提供しているし、同じ課題を抱えた企業をすべてユーザーにできる可能性がある、というふうにも捉えられます。
さらに言うと、個人的にはD2C市場はこれからもっとおもしろくなると考えています。言うまでもなく、インターネットの普及や個々人で発信できるメディアやプラットフォームができたことによって、今日ではよりニッチで熱量の高いコミュニティがたくさん生まれています。
そうなると、今までのように、できるだけ多くの人にマッチするように作られたブランドや製品・サービスでは「満たされない、響かない」というマーケットが生まれてきます。
D2Cが面白い理由は、このような今まで企業にとってマーケットと見なされなかったニーズやそこに集まる人達に向けて、すごく尖ったブランドがすごく尖った製品を作れるからです。
また、そうしたニーズを満たすことができれば、よりロイヤリティが高く、一人当たりの単価も高い顧客を掴むことにつながるでしょう。そういう意味では今コマースで起きていることは面白い流れだと思っていますし、この流れは止まらないと思っています。
これからもD2Cブランドはどんどん立ち上がるでしょうし、いろんなチャンスが次々に生まれていくでしょう。そうしたブランドや企業を支えるのが、SUPER STUDIOだ、という状況を私はクリアにイメージしていますし、そういう状況が作れたならすごく意義深いですね。
* *
前編はここまで。後編では、ここまでの流れを踏まえて、SUPER STUDIOが100倍以上の成長を果たすために必要なものは何か? そして、SUPER STUDIOの野心的な構想について、前田氏と林が語っています。ぜひ、後編もご覧ください。
SUPER STUDIOの成長には野心と人材が欠かせない
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